今の時代、「資産運用」が大事だと耳にします。しかし、お金や資産運用に関する専門用語は難しく、知識がない人にとっては「資産運用って何?」という状態ではないでしょうか。
投資を始めたいけど、何から始めたらいいかわからない……。そんなモヤモヤを解消するべく、お金の専門家である「ファイナンシャル・プランナー(以下、FP)」の松田聡子さんに、資産運用の基本中の基本について伺いました。
ファイナンシャル・プランナー 松田聡子さん
金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2009年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師などに携わる。現在は相談業務・金融メディアでの執筆・監修など。
執筆者保有資格:日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP®認定者、DCアドバイザー、二種外務員資格
公式サイト:群馬FP事務所
なぜ「資産運用」を考える必要があるの?
今回は、“超”投資初心者に向けて、資産運用についてお話を伺いたいです。そもそもなぜ資産運用について考える必要があるのでしょうか?今の生活で特に困っていない人にとっては、必要ないようにも思えるのですが……。
そうですね。「今の生活に満足していて、特に困っていないから資産運用なんて必要ない」と思っている方もいるかもしれません。特に20〜30代で日々多忙な方は「資産運用について考える時間もない!」とも思うでしょう。
また「損をするのが怖い」「どうしていいかわからない」「金融機関に任せるのが不安」という声も耳にします。
しかし、将来に目を向けてみると、さまざまなライフイベントや社会情勢の変化によって、今の生活水準を維持することが難しくなる可能性があります。
ライフイベントや社会情勢……。例えば、どのような例が考えられますか?
例えば、物価の上昇によって生活費が上がったり、病気やケガなどで予期せぬ出費が必要になったり、結婚、出産、住宅購入、子供の教育、老後など、人生のさまざまなライフイベントでお金が必要になったり……。
特に、20〜30代は収入が少なく支出も多い時期です。また、子育て世代は教育資金の負担も大きいでしょう。だからこそ、将来のために少しでも早く資産運用を始めるメリットは大きいと思います。
いつから資産運用を始めたほうがよい?
資産運用について、具体的にどんなタイミングで検討を始めるとよいのでしょうか?
早ければ早いほどよいですね。例えば教育資金であれば子どもが生まれた時から、老後資金であれば20〜30代から少しずつ準備を始めるとよいでしょう。
若い人はピンとこないかもしれないですが、少しの金額でもコツコツと投資すれば「塵も積もれば山となる」という言葉のように、お金が少しずつ増えていく可能性がありますよ。
ちなみに「投資」と聞くと、どうしても難しそうでハードルが高いイメージがあるのですが、“超”初心者でも取り組めますか?
たしかに従来の投資は「お金持ちがやるもの」というイメージで、実際にまとまった資金がないと取り組むのが難しかったんです。
でも今は、少額から始められる投資信託や、ポイントで投資できる「ポイント投資」など、初心者でも気軽に始められる方法が増えていますよ。スマートフォンひとつで口座開設から売買まで行えるサービスも増えてきました。
少額で資産運用しても大きな利益にはならないかもしれませんが、投資経験を積み、長期的に取り組んで少しずつ利益を増やしていくという意味では、価値があると思っています。
「投資信託」とはなんぞや?
ちなみに私も“超”投資初心者で、「投資信託」という用語すら理解できていません……。投資信託って具体的にはどのようなものですか?
投資信託とは、多くの投資家から集めたお金で、専門家(ファンドマネージャー)が株などを買って儲けたお金を分配してくれる金融商品です。
投資のリスクを減らすには、ひとつの投資対象に集中するより、複数に分散させるのがいいとされています。ある会社の株を買ったのに、その会社が倒産してしまうとせっかく出した資金がゼロになってしまいます。でも、複数の銘柄を買えば、ひとつがダメでも他でカバーできるからです。
ただ、個人のお金でトヨタやソニーなど複数の銘柄を買うには、大きな元手が必要ですよね。でも投資信託なら、たくさんの投資家から集めたお金でいろいろな銘柄を買うこともできるのです。
少ないお金でも世界中の資産に投資できるのが、投資信託の特徴です。今は100円から購入できるので、気軽に資産運用を始められます。
投資信託と一口に言ってもさまざまな種類があると思いますが、どのように選べばよいのでしょうか?
まずは、ご自身の資産運用に関する目標や、リスク許容度を明確にすることが重要ですね。
リスク許容度とは、資産運用でどれくらいの損失を許容できるかを示す指標で、年齢、収入、資産状況、投資経験などによって異なります。
例えば、若い人は長期間投資ができるので、損をしても時間をかければ挽回できる可能性があります。そのため、高齢者よりリスク許容度が高いといえます。また、収入や資産の多い人は多少損をしても耐えられるので、収入や資産の少ない人よりリスク許容度が高いといえるわけです。
あと、無視できないのが性格で、買った金融商品が多少値下がりしても気にならない人は積極的に投資してかまいませんが、値下がりで精神的にダメージを受けてしまう人はあまり無理をしないことが大切です。
まさに、私が資産運用で心配しているのが「失敗すること」です。過度な失敗をしないためには、どのような点に注意すればよいでしょうか?
資産運用では値動きがあるので、一時的に利益が出るときもあれば、損をするときもあります。
そうした中でも大きな失敗を避け、うまく資産を増やすためには、焦らずじっくりと取り組むことが大切です。短期的な利益を狙うのではなく、長期的な視点で市場の変動に惑わされずに投資を続けましょう。
できれば10年以上かけて、長い目で取り組むとよいですね。なぜなら、市場全体の値動きは上がったり下がったりしながら、長期的には上向きになっているからです。
途中でやめなければ、ほとんどの場合、資産を増やしていけるものだと考えています。
これから資産運用を始める際の注意点は?
投資信託を初めて買うとき、初心者が「これだけは知っておいたほうがよい!」ということはありますか?
投資信託には必ず「投資方針」が決まっていて「目論見書(もくろみしょ)」という書類に記載されています。これはネット証券でも街中の証券会社や銀行でも必ず目にするものです。
まずは、その内容をざっと読んでみましょう。「先進国の株式に投資する」とか「格付けの高い債券に投資する」といった投資方針なら、なんとなく理解できるのではないでしょうか。
もしその内容が難しくて理解できない場合は、その商品のリスクが高い可能性もあるので、避けたほうが無難です。
最後に、これから投資を始める方にアドバイスをお願いします!
最初は「投資額の決め方」に悩まれるかもしれません。例えば、教育資金を準備するために月1万円ずつ貯めようと思っているなら、5,000円を資産運用に回し、残りの5,000円を現金で貯めておいてはどうでしょうか。
このように、貯蓄したい金額を明らかにして、その一部を資産運用によって用意するよう計画すれば、無理のない資産運用ができると思います。
また繰り返しになりますが、資産運用は長期的な視点で取り組むことが大切です。短期で利益を狙うのではなく、10〜20年という長いスパンで考えるようにしましょう。
投資信託を買っても、毎日値動きをチェックする必要はありません。毎月定額を積み立てるよう設定しておけば、後はほったらかしでも大丈夫です。焦らずじっくりと資産を育てていくのがよいでしょう。
執筆者:久保田 まゆ香(くぼたまゆか)
長野県出身。取材・インタビュー・イベントレポート・生活お役立ち記事などを中心に執筆活動中。言葉で誰かの後押しをしたいとライター業をはじめ、いつか憧れの人と一緒に仕事をすることが目標です。やんちゃ盛りの男の子2人の母。
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