資産形成への意識が高まる中、分散投資先のひとつとしてインド株が注目を集めています。日本国内でもインド株に特化した新たな投資信託が数多く設定されており、中にはNISA口座で購入できるものも少なくありません。
本記事では、インド株が注目を集めている理由や具体的な投資方法、NISAで購入できる投資信託について紹介していきます。
なぜ今、インド株がアツいの?
近頃、日経新聞でインド経済に関する記事を見ない日はありません。これほどインドへの注目が高まっているのには、主に次のような要因が挙げられます。
- 人口ボーナス期への突入
- IT・医療分野の強さ
- 底堅い内需
それぞれくわしく紹介していきましょう。
人口ボーナス期への突入
インドの人口は2023年時点で14億3,651万人となっており、今や中国を抜いて世界一の人口大国となっています。
国連の推計によると、インドの人口は今後約40年にわたって増加を続け、2064年には16億9,704万人に達するとの見通しです。
特に、インドの人口について考えるときに押さえておきたいのが、「人口に占める若者の割合」です。2023年時点でのインドの平均年齢は28.2歳となっており、日本の48.4歳と比較すると非常に若い人が多い国であることが分かります。
現在、インドは15歳以上65歳未満の「生産年齢人口」の割合が多い「人口ボーナス期」へすでに突入しており、今後数十年にわたって継続するとされています。
日本が人口ボーナス期を迎えた1960年前後、高度経済成長によって大きな経済成長を遂げたことを踏まえると、今まさに若い働き手が増加しているインドは今後経済成長が期待できるといえるのではないでしょうか。
IT・医療分野の強さ
インド経済はITや医療分野に強みを持っていることが特徴です。
世界的企業であるAmazonが、インドに世界最大の拠点を置いているのはご存じでしょうか。高さ86メートルにもなるそのビルでは、1万5,000人もの従業員が働いているそうです。
また、「インドのシリコンバレー」と呼ばれるバンガロール地方には、世界各国のIT企業が進出するなど、IT分野におけるインドの存在はますます大きくなっています。
加えて、医療分野ではジェネリック薬品の生産拠点として高い優位性を持っています。すでにアメリカで流通しているジェネリックの40%はインド製となっており、医薬品業界において欠かせないサプライヤーとなっている状況です。
ITや医療の需要は根強く今後も拡大していくとみられることから、これらの分野に強みを持つインド経済も恩恵を受けやすいといえるでしょう。
底堅い内需
先ほどインドは人口ボーナス期へ突入していることを紹介しましたが、若い働き手の増加は国内の消費市場にも大きな影響を与えます。
たとえば、仕事を持って収入を得る人が増えると、家や車、家電などを購入する人も増加します。アメリカを見ても分かるように、人口の多い国の個人消費が経済に与える影響は多大なものです。
今後、インドは数十年にわたって人口増加が継続するとみられていることから、個人消費による内需は底堅く経済を下支えする要因となるでしょう。
また、インドではインフラ投資も経済成長に寄与する重要な要因です。
インドというと、「電車に溢れんばかりの人が乗っている」「舗装されていない道の上を車や牛が通っている」といったイメージを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
インドは急速な経済発展を遂げている一方、インフラ整備がまだまだ追いついていません。
2014年から政権を担っているモディ首相もインフラ整備への大規模投資を掲げており、高速道路や電力などインフラ整備への需要も今後高まっていく期待があります。
インド株に投資するなら「投資信託」がおすすめ
「今後の成長が期待できるインドに投資したい!」と考えても、実は日本国内からインドの株式市場へ直接投資することはできません。これは、インド政府によって外国からの投資に厳しい規制が設けられているためです。
日本国内からインド株へ投資するには、主に「①投資信託・ETFを購入する」、「②アメリカのADR(米国預託証券)を通じて投資をする」の2つの方法があります。
よりリスクを低減するためには、投資信託やETFへの投資を検討してみるとよいでしょう。ここからは、その理由について紹介します。
複数の銘柄に分散投資できる
投資信託では、1つのファンドに複数の銘柄を組み入れて運用を行います。たとえば、インドを代表するNifty50に連動するインデックスファンドでは、インドの株式市場へ上場する50社の株式へ分散投資を行う仕組みです。
もし株式に直接投資する場合、万が一その企業が経営破綻してしまえば、投資した金額がゼロになることも想定されます。インドのような新興国へ投資する際は、そういったリスクはさらに高まるでしょう。
その点、投資信託では複数の銘柄に分散投資を行いますので、投資した金額がゼロになるといった事態は考えにくいといえます。インド株をはじめとした新興国株式への投資では、投資信託を活用して分散投資を行うことがひとつの方法です。
無理のない範囲内で投資できる
投資信託は、少額から投資ができることも特徴です。最低投資金額は金融機関によって異なりますが、中には100円から積立投資を設定できるところもあります。
インド株への投資では、「興味はあるけどリスクを考えるとなかなか踏み出せない」という人も多いのではないでしょうか。
しかし、投資信託であれば少額からスタートできるため、精神的・金銭的にも無理のない範囲で投資に取り組むことができます。
専門家に運用を任せられる
新興国へ投資する際に苦労するのが、情報収集についてです。銘柄選定をしようと思ってもなかなか欲しい資料が見つからなかったり、言語が障壁になったりすることも珍しくありません。
その点、投資信託では「ファンドマネージャー」と呼ばれるプロの投資家が銘柄選定を行ってくれます。市場の動向を見ながら随時銘柄の入れ替えを行ってくれるため、手間をかけずに投資に取り組むことが可能です。
「インド株に投資したいけど、どの銘柄が良いのか分からない」という人は、投資信託での投資を検討してみるとよいでしょう。
おすすめのインド株関連の投資信託
国内ではインド株投資への関心の高まりを受けて、インド株に特化した投資信託の取り扱いが増加しています。ここからは、その中からいくつかのファンドを紹介していきましょう。
iTrustインド株式
ファンド名 | iTrustインド株式 |
基準価額 | 24,217円 |
純資産総額 | 57,806百万円 |
購入手数料 | なし |
信託報酬 | 年0.3828% |
信託財産留保額 | なし |
NISA対応 | 成長投資枠:〇 つみたて投資枠:〇 |
※2024年9月25日時点
iTrustインド株式はピクテ・ジャパンが運用する投資信託で、ファンドマネージャーによって選定された銘柄に投資するアクティブファンドです。
中長期的に成長が期待できるインド企業に投資しており、2024年8月末時点では34の銘柄を組み入れて運用を行っています。
業種別の構成比を見ると、金融が28.7%、一般消費財・サービスが15.7%、情報技術が13.8%となっており、さまざまな業種に満遍なく分散投資を行っているようです。
また、NISA制度では成長投資枠とつみたて投資枠のいずれも対象ファンドとなっており、非課税で投資ができるのも嬉しいポイントです。
SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド(愛称:サクっとインド株式)
ファンド名 | SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド (愛称:サクっとインド株式) |
基準価額 | 11,708円 |
純資産総額 | 69,013百万円 |
購入手数料 | なし |
信託報酬 | 年0.0638% |
信託財産留保額 | なし |
NISA対応 | 成長投資枠:〇 つみたて投資枠:✕ |
※2024年9月25日時点
SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンドはSBIアセットマネジメントが運用する投資信託で、「サクっとインド株式」の愛称で親しまれているファンドです。
インドを代表する株式指数である「BSE SENSEX」に連動することを目標としており、ボンベイ証券取引所に上場する株式のうちの30銘柄で構成されています。
また、インド株のような新興国ファンドは比較的信託報酬が高い傾向にありますが、このファンドは0.0638%と安価な水準で投資ができるのも大きな魅力です。
現在はSBI証券と松井証券の2社のみの取り扱いとなっていますが、今後販売会社が増えていくこともあるかもしれません。
HSBCインド・インフラ株式オープン
ファンド名 | HSBCインド・インフラ株式オープン |
基準価額 | 21,526円 |
純資産総額 | 390,097百万円 |
購入手数料 | 上限3.85% |
信託報酬 | 年2.09% |
信託財産留保額 | 0.50% |
NISA対応 | 成長投資枠:〇 つみたて投資枠:✕ |
※2024年9月25日時点
HSBC インド・インフラ株式オープンは、2009年10月に設定された約15年の運用歴を持つファンドです。3,900億円もの純資産総額があることからも、多くの投資家から人気を集めていることが分かるでしょう。
「HSBC インド・インフラ株式オープン」というファンド名の通り、インドのインフラ関連銘柄に特化したテーマ型のファンドで、2024年8月末時点では計71銘柄が組み入れられています。
投資先は鉄道や電力、通信などさまざまな業種に分散されており、「インドのインフラ投資需要に期待している」という人に向いているファンドです。
ただし、コスト面は他のファンドに比べるとやや割高な印象です。新興国のアクティブファンドはどうしてもコストが高くなる傾向にあるため、投資の際は十分な理解が必要といえます。
iFreeETF インドNifty50
ファンド名 | iFreeETF インドNifty50(233A) |
基準価額 | 209,130円(100口あたり) |
純資産総額 | 1,255百万円 |
購入手数料 | 各証券会社の手数料による |
信託報酬 | 年率0.385% |
信託財産留保額 | なし |
NISA対応 | 成長投資枠:〇 つみたて投資枠:✕ |
※2024年9月25日時点
iFreeETF インドNifty50は、2024年8月20日に日本国内で初めて東京証券取引所に上場した現物インド株へ投資するETFです。
iFreeETF インドNifty50は「Nifty50」をベンチマークとするインデックスファンドで、インドを代表する50社で構成されています。
ETFは、一般的な投資信託と違ってリアルタイムで売買ができるため、価格の動向を見ながら取引が行えるメリットがあります。
特に、海外株式へ投資する投資信託では、約定日が翌営業日になるなど申し込みから約定までに一定のタイムラグが生じてしまいます。「市場の様子を見ながら売買のタイミングを決めたい」という人には、ETFが向いているといえるでしょう。
なお、ETFはNISAの成長投資枠で購入できますので、非課税枠を活用して投資ができるのも嬉しいメリットです。
まとめ
インドは人口ボーナス期へ突入していることや、底堅い内需による経済の下支えがあることから、今後の経済成長に高い期待が寄せられています。
とはいえ、新興国への投資はリスクが高いことから、まずは投資信託を通じて少額・分散投資を徹底するのがよいでしょう。日本国内でもインド株に特化したファンドが増えていますので、ぜひ本記事で紹介したファンドを参考に投資先を選定してみましょう。
執筆者:椿 慧理(つばきえり)
新卒で入行した銀行で10年間勤務し、個人・法人営業として金融商品の提案・販売を務める。現在は銀行での経験を活かし、金融専門ライターとして活動中。
保有資格:2級FP技能士、1種外務員資格、内部管理責任者
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